
秋田県にかほ市の冬師地区に広がる 冬師湿原(とうししつげん) は、鳥海山北麓の仁賀保高原に位置し、標高はおよそ 400 メートル前後である。
周囲には流れ山と呼ばれる小さな丘が連なり、その間に点在する溜池や湿地が作る風景は、「象潟の九十九島」を思わせるような凹凸地形である。
地域住民によって野焼きが行われる春先にはミズバショウの白い花が、木々の間を埋める。
夏場の草原的な風景も特徴的であり、地域の努力によって維持される美しい湿原である。
湿原を知る
冬師湿原は、にかほ市冬師集落の南側を中心に 約 260 ヘクタール におよぶ広域湿原・湿地帯である。
冬師湿原は、春先にはミズバショウが一斉に開花し、湿原の季節開花を象徴する風物詩となっている。
この湿原は、湿原植生・草原植生・湿地林・ため池群などがモザイク状に入り組んだ複合環境である。
草原的な要素が強く出ている場所では、ススキ草原景観が展開され、地域の伝統的な野焼き(春の火入れ)によって維持されてきた。
冬師湿原一帯には、ハンノキの群落も見られる。


扇谷地溜池などのため池群が存在し、ジュンサイ、フトヒルムシロなどの浮葉植物や水面性植物が見られる。
冬師湿原の地形は、鳥海山の大規模な山体崩壊・岩なだれによって生じた岩塊の堆積と、それに伴う地形変動によって形成された流れ山構造に起因する。
紀元前 466 年(約 2,500 年前)に起きたとされる鳥海山の崩壊が、周辺の川をせき止めたり、地形を押し固めたりして、くぼ地や滞水域を生み出したと考えられている。
このような小丘‐窪地の起伏が連続する地形 (流れ山地形) の間隙には水が溜まり、湿原・池沼群が広がることになった。


湿原全体は鳥海山北麓湿地群として、環境省の重要湿地に選定されており、地質・生物多様性・景観保存の観点からも保全上の意義が高い。
湿原を巡る
5月上旬


7月下旬
草原のような風景になる。

▼扇状地溜池

装備・体力・スキル
車で現地に入るのが最も大変。
木道などはなく、外から眺めるタイプの湿原である。
道に沿っていれば、特に危険箇所はありません。
湿原を巡る
トイレはない。
駐車場は、扇谷地溜池前に広いスペースがあるので、駐車可能。
▼直前に看板による案内があり、これ以降は未舗装路を走ることなる。

アクセス
日本海東北自動車道 遊佐比子ICから45分ほど